五島列島赤島活性化プロジェクト 2年目の夏の活動報告会より ~ラボ☆レポ|研究室訪問~|KANAIGAKUEN ACTION BOOK|金井学園

 

はじめに ~しまあめラボの紹介~

 

福井工業大学の研究室のユニークな活動をレポートしている「ラボ☆レポ」シリーズの第8回目。今回取り上げるのは、環境情報学部の2つの研究室による共同プロジェクト、通称「しまあめラボ」です。このラボにより昨年スタートし、3年計画の2年目を迎えた「五島列島赤島(長崎県)活性化プロジェクト」が、昨年に続いて実施した現地での活動について、9月28日に開催された報告会の様子を中心にレポートします。

まずその前に、この「しまあめラボ」とはどんな研究活動を行っているのかというところからご紹介していきましょう。

 

「しまあめラボ」とは

福井工業大学 環境情報学部 環境・食品科学科 笠井利浩研究室とデザイン学科近藤晶研究室が行っている、長崎県五島列島にある二次離島赤島の離島振興プロジェクトです。

笠井研究室では雨水の利活用に関して研究を行っており、これまでに雨水タンクの研究・開発や、雨水の利用に関する調査などを行ってきました。これまでの研究成果を雨水を生活用水として利用する赤島に応用し、赤島の生活を水の面から改善する方法を探ります。

また、近藤研究室では笠井研究室を通じて様々な雨水に関するデザインを行ってきました。雨水を貯留し利活用する概念の「蓄雨」を紹介するための動画制作や、各種講演会・シンポジウム・学会などに使用する印刷物やサインのデザインなど多岐にわたります。グラフィックデザイン、映像制作、Webデザインの技術を活用し、このプロジェクトの記録・広報ツールの制作や赤島の地域活性化に繋がるコンテンツ制作を行います。

しまあめラボ ウェブサイト より転用 

 


赤島全景|近藤ラボ制作:空撮パノラマ画像に、公図(道路と土地の関係や境界を記録したもの)をさらに合成


(↑クリック 「しまあめラボ」Facebook Page を見る)


 

① 赤島活性化プロジェクト2018 の概要

 

さて、次に今年の活動報告会の様子から。冒頭、このしまあめラボのリーダー、笠井教授が活動概要を説明しました。
 

― 五島列島 赤島 ―

福岡港からフェリーに乗り長崎県の沖合にある五島列島の福江島に渡ります。さらに福江から1日に2便だけ運行されている渡海船で、約25分で到着。大きさはほぼディズニーランドと同じくらいで、島民が16名(常時10名)暮らしている二次離島です。電気は海底ケーブルを通じて供給されており、ネット環境もありますが、水道(地下水を含め)がなく、生活用水には雨水を頼らざるを得ず、各家庭に貯水タンクがあります。

聞いているだけでも気が遠くなりそうですが、笠井ラボが行っている雨水の利活用に関して研究(雨水タンクの研究・開発や、雨水の利用に関する調査)にとっては、まさに絶好の実験フィールド・・・笠井教授は説明の中でまるで「パラダイス」のようなところ、と話していたのもうなづけます。


― 活動の目的 ―

そんな赤島で、昨年の夏には、雨を集める集水面「雨畑(あめはた)」の設置を行いました。その設置の様子は、YouTubeに ドキュメンタリー映像<(リンクあり) として公開されています。今年度は、その「雨畑」から集落への導水管設置や大型雨水貯留槽の設置を計画。昨年度に引続き、8 月初旬から3 週間にわたってこの小さな離島で活動を行いました。

この、我々から見れば過酷とも言える離島にこそ、研究の目的である雨水活用が必要とされる環境が存在しており、ここでの「蓄雨(ちくう)」による雨まちづくりの先進事例を実現することにより、今後の水道代替システムへの提案やさらに将来的には東南アジア諸国などの水道が完備されていない国への展開が考えられるのだと笠井教授は語ります。


◇◇◇

 


報告会会場|FUT図書館ラーニングコモンズ

冒頭で概要説明をする笠井教授


 

② 雨水タンク内の水質評価と島内の水利用

 

概要説明のあとは、いよいよこのプロジェクに参加した学生のみなさんによる活動報告がはじまりました。

>最初は、雨水の水質分析を主に担当する 野村利空 さん。 

赤島で日常的に利用されている、一般家庭の雨水タンクの水質検査を行った結果を報告してくれました。また、環境情報学部長 矢部希見子教授の協力を得て、細菌類の測定分析した報告も行われました。滞在期間中には矢部教授もこの赤島まで訪れたとのことです。

>次に、実測に基づく給水システムの評価や、炊飯係として活動した表寺佳奈さん。

明るい気持ちを貫き自己管理をしっかりすることを目標に頑張ったという彼女。詳しくは聞きませんでしたが、昨年の活動では大変な思いをしたのかなと感じます。彼女は、島内のある家庭の1日の時間帯別の水使用量や、滞在期間中の日別の水使用量についてのデータ結果を報告しました。朝と夕方の時間帯における使用量が多いものの、生活に必要な食事・洗濯や入浴などによる最低限の利用状況であり、水道が設置されている日本の一般的な家庭での使用料と比較すると、相当節約された水の使用状況だということがわかりました。

 

③ 雨水を水源とした小規模集落給水システム

 

>笠井ラボの3人目は、初期雨水カット装置の導入などを担当している学生メンバー唯一の4年生、北出克徳さんからの報告です。

彼は、この夏第1部隊として笠井教授とともに赤島に1番長く滞在し、今年のメインの活動となる小規模給水システム用のタンクの設置を行ったことを報告してくれました。実際の詳細な活動日程などを見せていただくと、報告にはなかった草刈り・地ならし・資材の運搬・雨水タンクの手作業での運搬・初期雨水の除去装置設置・配管など、大変な作業をメンバーたちとこなしている記録が残っています。物静かで落ち着いた報告からは想像できない苦労の一端を、しまあめラボFacebook Page でぜひご覧になってみてください。
 


雨水の水質分析結果報告を行う野村さん

家庭の水使用調査結果報告をする表寺さん

雨水による給水システムの説明をする北出さん


 

④ 赤島プロジェクトの広報活動

 

― 近藤ラボ 活動の内容 ―

一方でグラフィックデザインや映像を専門としている近藤ラボの主な活動は、多様なメディアを使ってこの赤島における「雨水生活のブランディング化」の提案です。同時にこの「しまあめラボ」の活動自体の広報も担っています。先ほども紹介したウェブサイト、Facebook、YouTubeを中心に活動内容を発信すると共に、島の3Dデジタルマップ、グーグルマップのStreet View制作、このプロジェクトのPVを制作なども行っていることが、近藤先生から報告されました。

さらに将来的には、来島者の宿泊施設「あかしまの家」の営業による島民の営業収入、キャンプ場の運営、環境教育プログラムなどを通じ、赤島の経済活動活性化の提案を考えているとのことでした。

今回のブランディング活動報告の中では、SNSへの検索結果解析やエリア解析などを通じて、徐々に長崎県を中心としたより近い地域からの関心を得ていることが報告されています。また、検索されやすい情報コンテンツの例として、食べ物・アウトドア・釣りなどの話題には反応が大きいのですが、こうした一般受けする情報発信と本来の研究活動をどう関連付けるかが思案の為所であること、また今回スポンサーとして飲物を提供してくださったコカコーラ社さんについての情報発信をした際には、検索率が高く、やはり知名度のある企業さんの影響力を痛感したことなども報告されていました。

 

⑤ 赤島プロジェクト2018 ドキュメンタリー映像

 

続いて、近藤ラボから参加したデザイン学科の学生3名からも活動報告と編集されたドキュメンタリー映像の披露がありました。

>最初に、ドローンなどを使った特殊撮影を担当した、デザイン学科2年の 林野芳洸さんからの報告。 

ドローンでの撮影で赤島上空の強い風にかなり悩まされたようでした。大きなプロジェクトに参加して撮影するのは初めてということでしたが、撮影以外の様々な機材の運搬・設置や周辺の整備などの苦労もあったようです。

>次に雨水に関する講義を受け、「雨が好き」という理由から笠井先生に誘われプロジェクトに参加した宮﨑七緒さん。 

高価な撮影機材に気を遣いながらも、赤島の雨水生活や、プロジェクトの記録をもれなく映像に残そうとしたために撮影したデータが膨大になり、いざそれを2分のドキュメンタリーとして編集しようとした際には相当の時間がかかったそうです。

>最後は、デザイン学科2年生で主に音声を担当したのが吉村一訓さん。 

人の声だけを綺麗に録音することに苦労しているとのことですが、それ以外にも今回の編集作業の中ではBGMに気を使ったことを話していました。また、滞在中にインタラクティブアートとバイオリン演奏のコラボイベントが企画されていて、そこで思いもかけないトラブルに遭遇したこと、しかし、それをなんとか切り抜けたエピソードなども聞かせてもらいました。

こうして出来上がった2分のドキュメンタリー映像を観ると、そうした苦労がさわやかなムービーとしてまとめられています。ぜひ次のリンクから!
 

★ドキュメンタリー映像を、しまあめラボの YouTubeチャンネル で観る★

 


プロジェクトのブランディング化を説明する近藤先生

空撮などの苦労を語る林野さん(写真左)

ドキュメンタリー映像の撮影担当 宮崎さん(左)と 音響担当 吉村さん(右)


◇◇◇

最後に、質疑応答の時間が設けられ、参加しておられた外部の方々からも感想やご意見などをいただきました。

参加者の中には、今年の春休みにこの赤島を舞台として実験的に行われた環境教育プログラム「雨水生活体験」に参加された方々の姿もありました。その参加者のうちの一人である小学生の男の子も、最前列でこの報告を聞いていました。笠井教授は、その男の子に、「来年も活動が続くので他の参加者を指導する立場でぜひ参加してください。」と温かく声をかけていました。この赤島で環境教育を学んだ小学生の男の子のこれからに今回の報告はどう映ったでしょうか。将来が楽しみです。

3週間以上に及ぶ今夏のプロジェクト活動報告、いかがでしたか。

予定した最終日は台風の影響で船が欠航となり、嵐の中で1日を過ごしたというメンバーたち。幾多のトラブルを乗り越えた学生たちの報告には大きな達成感と自信が感じられました。

 


質疑応答に応じる笠井教授

島で有名になったという大型リアカー 作業の頼もしい相棒だったそうです

最終日の集合写真|しまあめラボFacebookより転用(リンクあり)


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 2018夏活動日程概略
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8/ 1 第1部隊(笠井、北出) 福井-博多-博多港
8/ 2 福江港-赤島
8/ 7 第2部隊(野村、表寺) 福井発
8/ 9 第3部隊(近藤、林野、宮崎、吉村)
8/18 島内イベント ヴァイオリン演奏とインタラクティブアート 開催
8/24  赤島-福江-福岡ー福井(深夜)着

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 参 加 者
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教員|環境・食品科学科 教授   笠井利浩|デザイン学科   講師   近藤  晶
学生|環境・食品科学科 / 4年 北出克徳 /3年 野村利空  / 3年 表寺佳奈
          デザイン学科 2年 林野芳洸 / 2年 宮﨑七緒|2年 吉村一訓  (敬称略)


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* 今回の報告会としまあめラボfacebook Pageの写真をお借りして 
* 作成したインスタグラムのスライドショーも併せてどうぞ!
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*  インスタグラムでイントロダクションスライドを見る >  こちら
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*Edited by KEI NEWS STAND|金井学園広報
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