スノーボードクロス五輪代表 高原宜希選手 母校で「夢見ること」の大切さを語る|KANAIGAKUEN ACTION BOOK|金井学園


6月10日(金) 金井講堂にて

平成27年度福井工業大学附属福井高等学校を卒業し、前回の北京冬季五輪スノーボードクロス日本代表として活躍された高原 宜希選手をお招きして福井工業大学附属福井中学校の2年生と附属高等学校の男女バレーボール部、スキー部の生徒を対象に講演会が開催されました。

はじめに、高原選手が高校時代にクラス担任であった竹内教諭から高原選手についての紹介がありました。
 
― 高原選手は、高校2、3年生のときに私が担任をした本校の卒業生です。高校時代はスキー部に所属しながらスノーボード競技に取り組み、高校3年生のときにユースオリンピック日本代表となり、5位入賞を果たしています。学業面でも優秀な成績を修めており、メリハリのある生活をしているという印象を持っていました。大学進学後もスノーボードを続け、ついに福井県出身として初の冬季オリンピック日本代表に選出されました。高原君は「俺は将来必ずオリンピックに出ます。」と周りにはっきりと言っていました。そして、その目標のためにしっかりと行動できる生徒でした。今日は先輩のお話をしっかり聞いて色々質問してみてください。-

紹介後には、高原選手の競技の様子などを収録した動画が流され、いよいよ高原選手が生徒たちの拍手に迎えられて登壇します。




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高校から北京五輪まで
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 みなさんこんにちは。今日本当に、僕のために、皆さんの大切な時間をいただきありがとうございます。まずは、簡単に自分の自己紹介から。改めまして高原 宜希です。年齢は24歳。スノーボードクロスという競技をやっています。この競技は、動画で見てもらった通り、4人で一緒にレースをして、早くゴールテープを切った人が勝ちとシンプルなルールですが、選手同士の駆け引きが面白くて本当に楽しい競技だと思っています。福井高校を卒業後は愛知県にある中京大学という大学に進学。今は敷島製パン株式会社に所属して活動しています。

 先ほども竹内先生の紹介の中にあったとおり、ユースオリンピックに出場、ワールドカップでは4位と、近年は割と安定して世界で戦えるようになってきていました。でも北京オリンピックでは転倒してしまい16位という結果になってしまいましたが、本当にいい経験をしたと思っています。たまたま福井県で初めての冬季オリンピアンということで、地元からも応援をいただき本当に光栄に思っています。



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「好き」や「楽しい」から夢が始まる
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今日は、「夢は叶うと信じることの大切さ」と「夢を追っているときに自分が体験した体験談」を話していきますので、リラックスして聞いてください。

ところでみんな、好きな人いますか? 好きな人ができるとその人のことしか頭にないという感じになると思うんだけど、僕は小さいころからスノーボードのことが大好きで、寝ても覚めてもそのことを考えていました。この夢中になることが実はとても大事です。

みんなも苦手な授業とか聞いてるときは時計見たらまだ20分しか経ってないとか、逆に好きなことや楽しいことをしているときってすごい時間が速く感じると思うんだけれども、この時間は何かに「夢中」になっているということ。「好き」とか「楽しい」から夢が始まるんじゃないかなあと。だから「好き」とか「楽しい」っていう感覚を大事にしてほしいと思います。

「好き」や「楽しい」から「夢」が生まれたら、まずそのことを常に強く思ってほしい。夢は先生から与えられるものではないし、両親から与えられるものでもなく自分で掴み取るものです。だから「宝くじが当たっちゃいました」みたいなことは本当の夢ではなくて、何かを成し遂げようとする気持ちを心の中に持ち続けることが大切だと思います。

夢は「何個あってもいい」と話したけれど、とりわけ「大きな夢」を持つことが大事です。大きな夢を一つ持てば、その途中の小さな夢は自然と叶っていくものです。僕の場合、「オリンピックに行きたい」って夢を持っていたからそのために何が必要なのか、何が足りないのかということをずっと考えています。大体競技をやっていてある程度のレベルの選手なら、みんなオリンピックに行きたいと思うもの。「オリンピックで金メダルを取りたい。」という大きな夢があれば、どういうトレーニングやどういうマインドセットをしないといけないのか、ということを自然に考えるようになります。

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夢のための地道な積み重ねの大切さ
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 「少し無理かもしれないくらい大きな夢」を持つと現実のギャップに苦しめられます。自分も小学校のころからオリンピックで金メダルを取りたいとずっと思い続けてここまで来ましたけど、今もまだ金メダルを取れてない。スノーボードクロスという競技は日本人では戦えないという風に言われていた競技でした。16年前にトリノオリンピックでオリンピック正式種目に採用されたのですが、ヨーロッパとは環境や体格の差は大きくて、正直僕は「世界とは戦えないんじゃないかな」と肌で感じたこともありました。

 大学1年生のときに、当時日本人では一番速かったのでワールドカップに参戦できる権利をもらえたのですが、ワールドカップデビュー戦で怪我をしてしまって、その時には「もうスノーボードやめよう」と思ったりもしました。そこからいろいろ悩んだ末に、幼いころから描いていた夢をもう一度思い出しました。しかしながら夢と現実の間には差がある。そこで、ワールドカップで表彰台に立つ姿を想像してリハビリ・トレーニングを徹底的にやりました。ウエイトトレーニングを地道に積み重ね、こつこつと目の前のことに一生懸命に取り組んだんです。

 本当にスノーボードが好きで、スノーボードのためのトレーニングが大好きだったから、毎日毎日2年間練習を続けていたら、怪我をした同じ会場でワールドカップ日本人最高順位の4位を獲得してこれまでの人生の中で忘れられない経験になりました。



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さらに成長するために大切なこと
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 ここからさらに成長するために必要な行動とか思考というものがあります。例えば、結果を見つめなおすこと。よくアスリートで怪我して「たまたま怪我しちゃいました」「運悪く怪我しました」とか、そんなこと絶対なくて、必ず怪我したときにも100%理由があります。そこにこだわらないと成長はできません。

 人のせいにしたりするとやっぱり成長が遠ざかる。誰かがどうこうではなくて、自分はどう思っていて自分がどうしたいのか、自分がどうなりたいのかという風に、何かあったときは必ず自分に矢印を向ける。団体競技でも誰かのミスのせいにするのではなく、それまでに何か自分にできなかったのかなと考えて、まず自分に矢印を向けてほしいですね。

 僕はいっぱい失敗してます。いろんな失敗して、高校の頃は竹内先生にもよく怒られました。だけど失敗したときこそビッグチャンス。どんどん挑戦してどんどん失敗して成長してほしい。失敗を恐れて挑戦しないのは本当に良くない。とりあえずやってみる。そこで新しい夢が見つかるかもしれないから。

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夢を叶えて実際に自分が感じたこと
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 最後に「夢を叶えて実際に自分が感じたこと」をお話しします。

 「オリンピックに出場する」という夢を叶えた今、次は「金メダルを取る」夢を成し遂げようという気持ちでいます。さらに競技者の人生が終わった後も、違う夢も見つけていきたい。夢を追っていくとき、実際9割のことは辛い。それでも1割の達成感のために僕はやっています。この1割の達成感って何かっていうと、少しでも成長できた喜びとか、誰かが喜んでくれたことへの満足とかを感じること。そのためにこれからもずっと夢をもっていたい。

 夢の一つを叶えたことで周りの人たちへの感謝の気持ちが湧いてきました。アスリートとして生活できるのも自分一人の力ではないし、誰かに支えられていることへの感謝が一層深くなりました。自分を産み育ててくれた両親、応援をしてくれている人たちはもちろんのこと、世界に視野を広げると全てのことに感謝しないといけないし、全てのことが当たり前じゃないと感じることがあります。

 スノーボードを通して、1年の半分くらいは海外に滞在していると日本では考えられないような出来事に巻き込まれたりします。蛇口ひねって出てくる水が飲めない国があったり、幼い子どもたちがその日暮らしにも困窮している様子をあちこちで見かけたりすると、普通に教育を受け色んなことにトライできる日本がいかに恵まれているかを感じることができます。みんなにもこの日本での生活への感謝の気持ちを持ち続けて生活してほしい。

 最後に、繰り返しになりますけど、「好きなこと・楽しいこと」に挑戦しましょう。ただこれは表面的に楽しいというわけではなく、勉強もふくめて多くのことに挑戦し夢を見つけてください。そしてそれを支えてくれている全てのことへの感謝の気持ちも忘れずに。これからも僕は日本のどこか、世界中のどこかで夢を追い続けています。みんなも一緒に夢を追い続けていきましょう。本日はありがとうございました。


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質問コーナーより(一部抜粋)
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Q 最近の、オリンピック選手になってからはトレーニングとかはどんな感じですか?

A 高原:次のオリンピックまで4年間時間があるから、正解か失敗かわからないけど本当にいろんなトレーニングにトライしていこうと思っています。

Q 他の選手との交流とかで何か印象に残っていることとかはありますか。

A コロナ禍ですごい制限されていましたけど、いい経験になったな、と感じています。高梨沙羅さんについては、ジャンプウェアのスーツでちょっと問題になって落ち込んでるのかな、と思ったんですけれども、早朝から選手村の横で一人で黙々と練習していたのがすごく印象に残っています。

Q 部活では初心者で、ものすごく弱いんですけど、どんどんあきらめずに続けていけば強くなれますか。

A 必ずできます。夢に対してめちゃくちゃ頑張っている日々のトレーニングや思いというのが必ずいい経験になりますし、「上手くなりたい」という純粋な気持ちでトレーニングしてほしいな、と思います。きっと上手くなります。

Q 県大会でも市の大会でも全国大会でも緊張するんですけど、試合前とかの緊張のほぐし方はありますか。

A 緊張しないためにはやっぱり練習しかないかな、っと思っていて、どれだけ自分を追い込んでどれだけ自分に自信をつけるかです。大会の当日になってから「何か上手くやる」とか、そんなの思ってもよけい緊張してしまう。僕もオリンピックのときに普段考えないようなこと、「あこでミスしちゃったら、どうしよう」とか、そんなくだらないこと考えちゃいました。だからミスしちゃう。緊張しちゃう。練習でできないことはできない。練習でどれだけ追い込んでやって、大会では普段通り楽しんでやろう、という感じでいいと思います。

Q 北京オリンピックお疲れ様です。海外の選手とかの体格とかの差を埋めるために、食事で意識したことや気を付けたりすることはありますか。

A 体を大きくしたいんだね。「体大きくしたい」とういとタンパク質を取って筋トレしなきゃいけないと普通思うんだけれども、やっぱり体大きくしたいなら炭水化物、ご飯。炭水化物をおろそかにして、タンパク質ばっかりに偏っちゃうとよくない。炭水化物を取ってしっかりエネルギーに変えていっていけばどんどん大きくなってくる。

Q 世界の大会に出るまでに日本でやっておいた方がいいことって何かありますか。

A まず、世界に出てみる。世界で何をするかとか、準備とかあまり気にしないで、まず「世界を知りたい」と思ったら、経験してみることが大切です。

Q 日常生活とか試合前とかにルーティンって作った方がいいんですか。

A 僕はあまり作らないタイプなんだけれども、作って自分が落ち着くのであれば作った方がいいと思う。僕らはいつスタートするかわからないし、きちんと決まってないから、作りすぎちゃうと「行け」って言われたときに行けないから、あまり作らないようにしています。ただし、一日の中の生活パターンはルーティンを守ってますよ。



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講演会を終えて
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 講演の前は緊張した様子だった中学生たちも、記念写真撮影に気さくに応じていただいているうちに緊張が解けたのか退場の際にはアーチを作って高原選手をお送りしていました。

 今回はご自身の体験談から親しみやすい語り口で生徒たちに講演をいただきました。私たちは中期計画の中で「夢を描き、夢を語り、夢を創る学園づくり」を標榜しています。そんな中、生徒たちと一緒に夢について大いに考える時間を頂き心より感謝申し上げます。

高原選手の今後のご活躍を心よりご祈念申し上げます。

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文 金井学園広報|「知」をつなぐ。「未来」を創る。 


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